Meeting a Japanese sailor, Wakao Yoshikatu
It was such a precious coincidence meeting a Japanese sailor, Wakao Yoshikatu on the island of Ikaria, Greece. /interview, transcription and photos by Ayane Tanaka./
We were curious to know about the philosophy and the vision of his life because it’s very rare to see Japanese sailors around the world. Here we share his story of the experience in both Japanese and Western culture, which makes him always like to start new things.
“I decide my way of living by myself, not by society. One reason for the decision is rooted in my experience in the exchange study in America 40 years ago. I was shocked by cultural differences, such as individualism and proactiveness. These new values have influenced my current way of living. Another reason is based on my focus on the value of free time, which I cultivated through sailing. In Japan, the priority tends to be working and commercial affairs, not leisure like sailing. In order to have my free time in Japanese society, I have to find out my own way to make a living.”
“The motivation for working is to make customers happy. I have work experiences in different fields such as a buyer of jewellery, a builder, and a hair artist etc. However, my belief in working is one: to make customers happy. I believe a person who is happy to please others can be the happiest person.”
You can track Wakao’s Sailing Vessel “Crow’s Nest 7” from here. We hope more Japanese sailors can be seen all over the world near future.
Full version in Japanese is below:
ギリシャのイカリア島にて、日本人セーラーの宜克 若尾(よしかつ わかお)さんにお話を伺うことが出来た。彼は世界各地をボートで妻と訪れており、今回はヨーロッパから日本に帰る途中とのこと。日本人としては非常に珍しいセーリングを趣味としている彼。一体どんな人なのだろうか?「周りから次は何始めるの?と聞かれるくらい彼は新しいことを始めるのが好き。」と妻は言う。何が彼をそうさせるのか。日本と西洋の文化をこれまで経験してきた彼のストーリーをここにシェアしたい。
“自分で自分の道を決めた人生を歩んでいる。そのルーツは学生時代のアメリカ留学にある。”
留学という決断
「日本には、社会に決められた「レール」が存在する。大学を卒業し、大手企業に就職するというもの。僕もそうするのだと思っていたが、まだ海外留学が珍しかった40年前、アメリカに行く決断をした。なぜなら、自分とは何か、何のために生きていくのかと疑問に思ったから。そして自分自身を見つめるためには日本の文化が分からないといけない。日本の文化を理解するためには、違う文化を見て比較しないといけないと思ったから。そうして大学3年生の時に、一番身近だったアメリカに半年間留学することにした。」
アメリカでのカルチャーショック
「日本との大きな違いが2つあった。まず、考え方が違うということ。日本のような全体主義ではない、お互いを認め合う文化と個人主義がすごくいいなと思った。2つ目は、自分から何かを起こさないと事が始まらないということ。知り合いが全くいない環境のおかげで、なんでも自分からする力を身につけられた。こういった新しい価値観に触れた経験から、大手企業に入るよりも自分で何かできることがあるんじゃないか、自分の好きなことをする方がいいんじゃないかと思うようになったことが、今のキャリアパスに繋がっている。」
こうして留学後、大手企業ではなく小さな魚屋で修行を積む決断をし、その後「自分でビジネスをする」という夢を叶えた。メンズアクセサリーショップcreamを立ち上げて、バイヤーとして世界中を飛び回る生活を送っていたそうだ。
“日本社会で「自分のための時間」を持つには、自分のやり方でやっていかないといけない。“
セーリングに気付かされた余暇の価値
「自分でビジネスを始めた頃から、仕事以外の時間を作れるようになりセーリングを再び始めることができた。2012年に今の船を購入し、世界中を航海して沢山の国の文化を見てきた。そこで日本と西洋との「余暇」に対する価値観の違いを肌で感じた。まず、西洋の人は「余暇のために働いている」。例えば、地中海の街は港を中心に街が発展していて、バカンス用のボートがたくさん来ている。遊ぶために働くというライフスタイルが浸透していることの現れだ。一方、日本文化は「生活=仕事」。日本の港は商業用優先であるため、バカンス用のボートの代わりにフェリーといったビジネス向けが多くを占める。このことからも仕事が優先される社会だと分かる。日本では、働くこと=良いことという考えが一般化してしまっているが、たとえ失業率が低くても、実際に幸せな人は少ないように強く感じる。時間的な余裕がないのがこの問題の連鎖を生んでいる。それを見て、自分は自分のやり方でやっていかないといけないなと思った。」
興味深いことに、彼はバイヤーの他に、建築や美容師といった様々な経験を持っている。彼のこれらの仕事に対するモチベーションはどこから来るのか。
“仕事のやりがいは、人に喜びを与えられること“
自分にとって仕事とは
「仕事で大事なのは、人に喜んでもらえること。だから、仕事の精神「お客さんの喜びのため」を知ることがまず大事。例えば政治も、憲法という精神に基づいて法律というマニュアルが成り立っている。仕事も同じで、「精神」なしに「マニュアル」だけでは仕事の意味を理解しないままタスク処理することになる。だから、仕事の根本である精神さえ分かれば、マニュアルなんかがなくてもお客さんの望んでいることは何なのか自分で考えて仕事をこなすことができる。」
なぜ仕事としてビジネスを選んだのか
「ビジネスは幸せを作ることができると信じている。例えば、政治の世界はみんなが100%賛成する状態は不可能であり、必ず敵を作る。つまり、誰かを苦しめないと誰かの幸福はない。そのバランスを取らないといけないそんな大変な仕事はないと思う。」
人に喜びを与える人こそが幸せになれる
「人の喜びを自分の喜びだと思える人が、幸せになれる人。人の喜びを妬む人や損得を考える人、人に喜びを与えるのではなく自分だけが喜んでいたらいいという人は、幸せになれない。」
彼がこれまでやってきた仕事は一見すると様々だが、根本の考えは共通している ― 「人に喜んでもらうこと」が目的だったのだ。
宜克さんのセーリングボート「Crow’s Nest 7」はここから現在位置や過去のセーリングトラベルを追跡できる。日本人セイラーがもっと世界の海で見られる日が来ることを願う。
取材·写真撮影·編集 by 田中文音(たなか あやね)